コムジャンオ


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雑学の宝庫 

更新日:
 2010年7月25日


◎コムジャンオ(곰장어、꼼장어)
 ヌタウナギ(メクラウナギ)を焼いた料理。

 コムジャンオ(곰장어)とは、ヌタウナギ科の魚類です。日本ではヌタウナギや、メクラウナギなどと呼ばれていますが、日本の食卓で見かけることは、ほとんどないようです。最近までは、メクラウナギと呼ばれていましたが、名称の「メクラ」が視覚障害者に対する差別的な意味を持つ差別用語であると認識され、2007年に日本魚類学会によって綱以下の名称が「ヌタウナギ」に、種としての「メクラウナギ」は「ホソヌタウナギ(細饅鰻)」に変更されました。
 韓国では肉は食用として、皮は革製品にと、幅広く利用されています。ヌタウナギの革は牛革より強度が有り、かつ、しなやかとのことで、韓国や米国では、ヌタウナギの革で作った財布などは高級な革製品として流通しているそうです。
 韓国語名は、正式には「モクジャンオ(먹장어)」で、「コムジャンオ」は釜山地方の方言だそうです。ここで、「장어(チャンオ、ジャンオ)」というのは、漢字で書くと「長魚」で、体が長い魚を表しています。ソウルでは、「チャンオ」と言えば「鰻」のことを指しますが、釜山では、どうなのでしょうか。一応、区別するためにウナギは「ミンムルチャンオ:민물장어(淡水のチャンオ)」、アナゴは「パダチャンオ:바닷장어(海のチャンオ)」、ハモは「ケッチャンオ:갯장어(浜辺のチャンオ)」と呼ばれていますが、いずれもチャンオ(長魚)です。
 コムジャンオは、釜山市機張郡沿岸から対馬海峡、日本海沿岸に生息しているようです。ウナギのように長い胴体ですが、ピンク色がかった色で、一見して鰻ではないことが分かります。夜行性のため目は退化し、皮の下に埋没しています。鼻の穴は1つで、その周りに4本のヒゲがあり、さらに顎のない口の周りにも4本の触覚があります。顔だけ見るとドジョウにも似ていますが、色なども考えると、非常に気持ち悪いです。
 網にかかっている弱った魚や死魚に吸い付くため、漁師泣かせの「害魚」と言われているようです。また、体に触れると、身を守るために強烈な粘液を出すため、漁師や釣り人には、網や糸を汚す存在として大変嫌われているようです。この粘液を分泌する穴は、腹の辺りに2列、6個ずつあります。
 釜山の東側、蔚山市に隣接する機張郡(キジャングン)は、釜山市で唯一の郡です。この機張(기장:キジャン)で昔から有名なものはワカメ、太刀魚、カタクチイワシ、そしてコムジャンオでした。昔、特産物は君主に献上するのが慣例でしたが、コムジャンオだけは、その異様な見た目が受け入れられず、下賎の食べ物として避けられていたそうです。その一方、庶民にとっては貴重なタンパク源として重宝され、何匹かを焼いて食べれば飢えを知らないとまで言われていたそうです。当時、山で農業をしていた人が、麦わらや松の葉を使って、コムジャンオを焼いて食べた料理方法が、現在も機張地方に残っています。
 その後、1910年代頃には釜山都市部でも食べられるようになっていったようです。食料事情が悪かった1940年代には栄養食として注目され、1960年代には酒のつまみとしても注目されるようになりました。現在は釜山市のチャガルチ市場(자갈치시장)や、釜田市場(부전시장:プジョンシジャン)にコムジャンオのお店が集まったコムジャンオ通りがあります。また、釜山の屋台では必ず見かけるほど、庶民の間には浸透しています。
 日本では、ウナギと梅干しの食べ合わせはダメだと言われていますが、何と、コムジャンオは桃と相性が良くないそうです。桃の持つ有機酸が刺激を与え、腹痛を起こすと言われているそうです。ですから、コムジャンオを食べた後は、桃を食べない方が良いようです。
 コムジャンオは、魚というよりは、鶏に近い味で、引き締まった身のプリプリした食感が美味しいです。高タンパク低カロリーで、強壮のシンボルとも言われ、釜山の人達の好物の1つだそうです。
 コムジャンオの料理には、以下のようなものがあります。

・藁焼き
 機張のコムジャンオ料理の醍醐味とも呼べる、野趣あふれる「わら焼き」です。生きたままのコムジャンオを良く乾燥させて、燃えやすくなったワラの中に入れて、一気に焼き上げます。焼きあがって、真っ黒に焦げたコムジャンオの皮をずらすと、皮がスルリと剥けて、ホクホクとした白い身が現れます。この手軽さが重宝され、機張地方の山で働く人々に欠かせない料理となっていったようです。
 食べる時は、ゴマ油に塩を入れ、焼いたコムジャンオにつけて食べると、コムジャンオが持っている風味が引き立って、とても美味しいです。

・松葉焼き
 機張のコムジャンオ料理です。松葉焼きは、いったん藁であぶったコムジャンオに松葉を絡めて、火をつけます。これによって、コムジャンオに松の匂いがついて香ばしくなります。多分、ワラ焼きの単純さに飽きた人達が、山の中で考えだしたのではないでしょうか。

・練炭焼き
 チャガルチ市場周辺で発祥した、屋台型の料理です。ある程度調理した後に、練炭の上にアルミホイルを敷いて、この上に捌いたコムジャンオを乗せて、焼いて食べます。味付けしたコムジャンオを焼くなど、簡単かつ、美味しく食べられるようになっています。

・コムジャンオ炒め
 コチュジャンベースのソースにコムジャンオを絡めて、炒め煮する料理です。コチュジャンの辛さとニンニクの匂いが、コムジャンオのクセを抑え、食べやすくなります。釜山の市街地で見かけるコムジャンオ料理は、このスタイルが多いようです。






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